[ブログ更新]デジクロ3期、2度目の貝澤演出回は、珍しく女キャラ度高い変化球なエピソード♪
これまでの「デジモン」シリーズとは色々と変えた見せ方が特徴的な『デジモンクロスウォーズ時を駆ける少年ハンターたち』。
デジクォーツというリアルワールドとのレイヤー的なバトルフィールド的設定だけでななく、デジモン自体のスタンスも「デジタル世界が生みだしたモンスター」というよりは「デジタル時代の魑魅魍魎(モンスター)」と言った方が腑に落ちる感じで通している点が大きな特徴になってます。
そのストーリーも、従来のような巨悪デジモンに立ち向かうのではなく、1話で時計屋のおやじの台詞にもあるように、人間の悪の心と結びついて悪事を働くことがベースになっている点や、バトルの決着もハントで仲間にするというのが基本パターンなので、単純な退魔ものとは一線を画していることが多いのも特筆すべき点ですね。
これは1クール目中盤以降に、より如実になってきてまして、作劇的なノリはかなり5期『鬼太郎』的といえるでしょう(笑)。
そして今週は2クール目に突入しての、最初のシリーズディレクター貝澤さん直接担当エピソード。
まだ直接演出は、今シリーズの世界観を呈示する第1話(55話)しか担当していなかったので、どういう話になるのか?も大いに興味がそそられるところでもありました。
幽霊から電話がかかってくるという噂のある古びた電話ボックス。その情報を知ったタギルとユウは、デジモンの仕業かもと思い、電話ボックスがある峠へとやって来た。そこで二人は幽霊ハンターを自称するカオルという少女と出会った。霊的存在を“科学的に”信じるカオルは、噂の正体を確かめにずっと電話ボックスを見張っていたのだ。その時、電話ボックスの受話器から確かに何者かの声が!さらにカオルが持つ幽霊探知機は反応があり、それを辿って行くと、付近にある水力発電所に辿り着いた。三人は正体を調べるために、発電所の中へと入ることにした……。
というストーリーで、シチュエーションからして今回はかなり『鬼太郎』チック(笑)。
殊に、アバンでの『ブレアウイッチ』を思わせる、POVで描写された幽霊電話ボックスの心霊体験ムービー(動画サイトからの映像という見せ方もポイント!)は、まさにホラーもののそれ!
また、携帯電話の普及により公衆電話自体が少なくなった現代に於いて、「古びた電話ボックス」自体が怪談めいたものでもあります。
そんなスタートの今回ですが、まず印象深いのが、執拗なまでに(笑)多用されていた引きレイアウト。
電話ボックスへとやって来るタギルとユウのシーンが如実で、いつもの住宅街と違う、山中というランドスケープと合せて、かなりインパクトがあります。
また寄っても多くのカットがフルサイズという客観的な雰囲気が、ホラーテイストで引っぱる話にマッチしています。
それに加えて、今回の実質的な主人公=カオルにより感情移入を促す意図も案外とあるようにも感じますデスね。
話としては、タイキはほとんど登場せずシャウトモンに至っては出番すらない相当に変化球なのだけど、それ以上にモブキャラも登場せず、必要最小限のキャラしか登場しないのでミニマムな雰囲気が全体に漂うのもミソ。この感じも貝澤さんらしいところ。
オチもそうだけれども、今回のバトルの理由にしても、勧善懲悪な方向に終始しない持っていき方でもあり、デジクロ3期のあり方が強く打ち出た内容でした。
特に、パタモン、ポヨモンをいつものようにハントするのではなくて、二匹の望み通りに水力発電所付近で静かに暮らせる形で決着付ける持っていき方もグッド。
それを受けてのハートウォームでちょっとファンシーな余韻を出す、ラストの電話ボックスのシーンもニヤリでした♪
カオルの帽子をポヨモンが被って電話ボックス前で彼女とすれ違う(もちろん、その姿はカオルには見えない!)カットが、ある種の“気持ちの繋がり”感を出すだけでなく、帽子を無くす──ポヨモンにあげることが、いわゆるファンタジーの残滓性を醸し出しているというギミックにもなっている点がポイント。
・・・普通は、カオルの方が残滓になるものを手にして現実に戻るのですがが、所持品を失わせることでそこを演出する、逆手パターンというのも心憎い限り。
と同時に、このところ割と定番化しつつある、ゲストデジモンと関わった子供たちが、デジモンの存在をきちんと認識する(友人になったり、ハンターになったり)というパターンを外した、その意味でもイレギュラーな展開と言えるでしょう。
ところで今回について暮田公平さんが
「穴、落ちるキャラクターの芝居、上から迫ってくる(落ちてくる)巨大な回転体、帽子かぶった女の子、貝澤さんだなあ」
と呟いておりましたヽ(´ー`)ノ
確かにその通り!!
実際にカオルの縦坑への転落とその途中での芝居(逆さ吊りになってしまうカオルが、いかもに貝澤さんぽいノリです♪)や、フランシス水車の落下の危機など、縦方向を意識させる見せ方で押してくるところがやはり演出的な見どころでもあります。
あと雨も降ったしww
さらに「貝澤さん的」といえば、やっぱりシャドウの落とし方でしょう!
発電所へと向かって鬱蒼とした木々の間を歩いて行く半調シルエットのタギルたちや、発電所内での天窓から差し込むうっすらとした光と陰のコントラスト、地下階へと降りて行くカットなどでの手前にグラデーションのシャドウを敷いた薄暗い雰囲気の作り方は、流石の一言♪
細かい点ですがアイルが回想するシーンで、『ガッシュベル』の頃から貝澤さんが使い続けてきた、フレーム周囲をモノクロ化してビネット加工した回想処理ではなく、全体にハイキー化して軽いガウスぼかしのようなデフュージョン処理をしたものになっていたのが、「お!」と感じたり。
ちなみに「帽子を被った女の子」というキーワードは、恥ずかしながら実はこの暮田さんのTWで気がつかされまして、『鬼太郎』では19話の里見ちゃんがまずその筆頭で、細かいところでは『ファンファンファーマシィー』29話でもぽぷりが、土ネコの穴へ探検に行く際に帽子を被ってます。しかもこの帽子はコンテでのアレンジで、しかも今回のデジクロ同様、最後は帽子は土ネコの手に渡るのです!
それを思うと、カオルの帽子というのはコンテ時のキャラ表発注で貝澤さんがオーダーされたのでは?とか思ったりしたりして☆
またトラブルメーカーとしてアイルも登場して、話をややこしくする(というか、そもそも事件の元凶だったりもするのだけれど)賑やか師的な見せ場がふんだんに盛り込まれていて、久々というか珍しいくらい女子度の高いエピソードでもありますねヽ(´ー`)ノ
アイルがユウにお熱を上げてるカンジを、タギルには邪険な態度で裏表激しい方向に演出してギャグっぽく見せる描写も、コメディリリーフらしくてOK。
アイルが事件の元凶という展開から、最後は彼女がバスで一人強制送還されるかのような絵面のカットも──心情的にはおそらくユウと一緒に帰れないのでガックシだと思うのですが──、憎めないながらも罰が当たった的な雰囲気に持っていっている点も上手いです。
ゲストのカオルは話の展開もあって、かなり不敵かつ冷静でありながらも行動的で、男勝りな少女として描かれておりまして、いわゆる女の子らしい可愛い笑顔という表情はほとんど出てこない点も特徴ですね。
このキャラ付けが、(作中ではあまり接点はないものの)アイルの例によってミーハーなノリとも上手くコントラストが付けられている感じもありました。
余談ながらラストカットに、チラリとアカリがいたのも嬉しかったりヽ(´ー`)ノ
でもオポッサモン役として白石涼子さんがいたのだから、何か一言くらいあってもよかったかも?(そのくらいの呎はあったような気もしたし)…とか思わず贅沢なことをいってみたりして(^^;;
てなカンジで♪全体としても(おそらくシナリオ段階から)変化球なエピソードだったわけですが(笑)、そんな話を担当するところもちょっと5期『鬼太郎』的だったり……ですね。
いずれにしても貝澤さんの演出は、毎度のコトながら自分をゾクゾクさせてくれますよ☆
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