愛執(笑)花がつお
5期『鬼太郎』では、特に3クール目を越えてから数年前まで演出助手だった、若手の演出マンがすごく良い仕事をしているという印象があるわけですが、今週のエピソードを担当した土田豊氏もその一人。土田氏は3クール目以降の新EDの演出を全面的に委されており、特にコミカルな雰囲気や5期ならではの萌え要素、それでいて妖怪らしい不気味な部分をも盛り込んだ土田演出によるEDからも、その実力は充分うかがい知れます。
今回は、その土田氏のEDで見せたバランス感覚が遺憾なく発揮された内容といえるでしょう。
かわうそが故郷のオベベ沼に戻って悪さをしていると聞いた鬼太郎は、ねずみ男とともにその事実を確かめに向かった。被害にあったのは村に住む少女ばかりで、みな美しい声を盗まれていた。かつて鬼太郎に負け、己の悪行を悔い改めたはずのかわうそが、本当にまた悪事を重ねているのか? 調査する鬼太郎たちの前に現れた妖怪は、果たして……。
と、鬼太郎とかわうそとの出会いの物語を織り交ぜつつ、少女達から声を盗んだ妖怪退治の調査をする鬼太郎とねずみ男の姿を追って行く、『鬼太郎』としてはスタンダードなストーリーですが、コメディリリーフとしてのネコ娘やアマビエの見せ場、妖怪をおびき寄せるために女装するねずみ男(「ねずみ姫」と呼ぶ鬼太郎も愉快)にシュールすぎる川男の会話、謎の妖怪に襲われる少女のシーンで見せるスリラータッチ満点の描写──フットプリントが忍び寄り、気づいた少女が恐怖に駆られ走り出すと、フットプリントが見る間に追い抜く恐怖感!──。あるいはかわうそと鬼太郎の出会いを見せる回想シーンでの、ポケットに手を突っ込んで現れ、軽快にバトルを開始する鬼太郎のクールさや、バトル後かわうそを戒める鬼太郎のシーンでの人情ドラマ的な描写等々、シナリオ段階からある程度仕込まれていると思われる、ストーリー要素としてのギャグからシリアス、ハートウォーミングまでをバランス良くシームレスに映像として結実させています。
なかでも、少女が襲われる恐怖シーンは、黄昏時から一気に夜の帳が降りて闇──妖怪が闊歩する空間のメタファであることは明白──を造り出す“逢魔が時”を目で見せる演出は見事!
また、今回の舞台となるオベベ沼ですが、そこや周辺のランドスケープのBGがいつも以上に緻密で、それに合わせて全体的にどことなく実写っぽい空気感を見せるレイアウトやタイミングによる演出を見せているのも特色でしょう。土田氏はロケハンをしたか、少なくとも具体的なランドスケープ・イメージがあったのではないかという気がします。この雰囲気の違いは、前回の土田演出回である31話でのBGやレイアウトと比べるとよく分かると思います。
ストーリーとしては、結構19話に近い“妖怪と人間との共存”というテーマがメインになっており、かわうそに化けて悪事をはたらいていた一目入道の、人間に裏切られた淋しさと悲しさと、その裏返しにある人と仲良くしたいという気持ちにスポットが当たるようになっています。
ここで、かわうそもかつては同じように孤独で淋しかった事が語られるわけですが、これは26話でかわうそが横丁のつまはじきになりそうになったアマビエをかばう理由と同じワケですよ!
で、冒頭での、かわうそが横丁から姿を消して慌てふためくアマビエの姿(アマビエに顎で使われるかわうそのイメージ・モンタージュも愉快)が、単なるギャグシーンではなく、ここと有機的に絡んでもいる抜け目ない構造がニクイですね〜〜。
また、オベベ沼への行き帰りなどでみせる鬼太郎とねずみ男の軽口のやりとりは、二人の友情の見せ方としては、これまでの中で一番効果満点だったように思います。
さてさて、今回のネコ娘の出番は冒頭とラストの2シーンのみ。完全にコメディリリーフとしての出番だったわけですが、理由も語られることなく延々鰹節を削る続けるシュールな描写が、問答無用におかしすぎ! しかも鬼太郎が戻ってくるまでアマビエと二人で削り続けている、なんとも病んだ(笑)ノリもケッサク。
ワンポイントながらインパクト満点で、これはこれでおいしいなぁ〜などと思ったりヽ(´ー`)ノ
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